ICSP 会計税務研究会

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要

最終更新日:2026年2月25日

カテゴリ:税制度

今回のコラムでは、昨年12月19日(金)に与党から公表されました「令和8年度税制改正大綱」から、法人課税・消費課税に係る主な事項をご紹介していきたいと思います。

なお、税制改正大綱は改正案の概要を示すものでありますので、最終的な改正内容については、今後の国会審議等により、変更が生じる可能性がございますことを予めご留意ください。

目次

  1. 法人課税
    1. 特定生産性向上設備等投資促進税制の創設
    2. 研究開発税制の拡充
    3. オープンイノベーション促進税制の見直し
    4. 賃上げ促進税制の見直し
    5. 特定税額控除規定の不適用措置の拡充
    6. 企業グループ間の取引に係る書類保存の特例の創設
    7. その他主な租税特別措置等の見直し
    8. 企業再生税制の見直し
    9. その他の主な見直しについて
  2. 消費課税
  3. 結びと次回の紹介

1.法人課税

(1)特定生産性向上設備等投資促進税制の創設

危機管理投資・成長投資による「強い経済」を実現するために、国内における高付加価値型の設備投資を促進するための大胆な設備投資促進税制として、特定生産性向上設備等投資促進税制が創設されました。

本税制は対象となる大規模生産性向上設備等の取得価額の合計額が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)となっており、投資額が比較的多額となることから、投資計画の検討が重要となります。

なお本税制については、産業競争力強化法の改正が前提とされており、その他概要については以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図1

(2)研究開発税制の拡充

① 戦略分野国内生産促進税制の見直し

特定生産性向上設備等投資促進税制の創設に伴い、既存の戦略分野国内生産促進税制が見直されます。

各区分に応じた換算方法については、以下の図をご参照ください。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図2

② 重点産業技術試験研究費の額に係る税額控除制度(戦略技術領域型)の創設

国家戦略として重要な技術領域への研究開発を促す観点から、新たに「戦略技術領域型」を創設し、AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、・バイオ・ヘルスケア等に係る試験研究費について、 既存の研究開発税制とは別枠の税額控除率等が設定されました。当該制度の概要は以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図3

③ 一般試験研究費の額に係る税額控除制度(一般型)の見直し

一般試験研究費の額について、EBPM(Evidence-Based Policy Making)の観点から、データに基づく分析を踏まえ、企業が試験研究費を増加させるインセンティブをさらに強化する観点から、 一般型の控除率カーブ及び控除上限の変動措置について見直しが行われました。当該見直しについては、以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図4

④ 中小企業技術基盤強化税制の見直し

既存の中小企業技術基盤強化税制の適用期限が3年間延長された上で、繰越控除制度が新設されました。当該概要については、以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図5

⑤ 特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション型)の見直し

大学等との共同研究及び大学等への委託研究に係る特別試験研究費の額について、手続が合理化され、さらに新規高度研究業務従事者の範囲や募集要件が緩和等されました。

当該概要については、以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図6

⑥ 海外への委託研究費に係る税額控除の見直し

近年海外への外部委託による試験研究費が増加しているところ、諸外国では、当該研究開発税制の対象となる試験研究費に制限がされている場合が多いことから、 国内の研究人材や研究開発拠点の維持・強化を図るため、海外委託試験研究費の範囲が見直されました。

当該内容は以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図7

(3)オープンイノベーション促進税制の見直し

日本経済の成長を牽引する大規模スタートアップを輩出するため、スタートアップの出口について、IPOへの偏重が指摘される中、出口戦略の多様化、 特にM&A型の促進は極めて重要であることから、対象となる株式に3年以内に出資割合が50%超となることを見込む場合における出資割合が50%以下の株式を追加するとともに、 協業により一体的に進める観点から、事業会社がスタートアップを吸収合併した場合の特別勘定の取崩方法の見直し等がなされました。
当該概要については、以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図8 2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図8-1

(4)賃上げ促進税制の見直し

物価高に負けない構造的・持続的な賃上げを強化する観点から、令和6年度税制改正において、本税制が抜本的に強化されたところ、 一方で足元では賃金上昇率がバブル期以来の水準となる高い伸びを示しており、本税制の要件となる水準を上回る状況にあることから、 大企業向け措置については適用期限を待たずに廃止されます。

また、中堅企業向けの措置及び中小企業向けの措置につき、必要な見直し(教育訓練費の上乗せ措置が廃止等)がなされました。当該見直しの内容は以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図9-1 2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図9-2 2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図9-3

(5)特定税額控除規定の不適用措置の拡充

収益が拡大しているにも関わらず投資や賃上げに消極的な大企業の行動変容を促す観点から、特定の租税特別措置の適用を停止する措置(不適用措置)について、 設備投資と賃上げに係る要件を同時達成することを求める等の要件強化等がなされました。当該内容については、以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図10

(6)企業グループ間の取引に係る書類保存の特例の創設

内国法人が関連者との間で特定取引(業務委託料、管理費等)を行った場合において、取引関連書類等に当該取引に関する資産又は役務の提供の明細、 その取引において内国法人が支払うこととなる対価の額の計算明細等の書類を作成・保存が義務づけられます。当該内容については、以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図11

(7)その他主な租税特別措置等の見直し

① カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の見直し

既存のカーボンニュートラルに向けた投資促進税制について、特別償却率及び税額控除率が見直された上で、適用期限が2年延長となりました。
当該見直しについては、以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図12

② 認定株式分配に係る課税の特例(いわゆる、パーシャルスピンオフ税制)の見直し

2028年(令和10年)3月31日までの時限措置とされている認定株式分配に係る課税の特例(いわゆる、パーシャルスピンオフ税制)について、適格株式分配とする要件を見直すとともに、従前の適用期限が廃止されます。
当該内容については、以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図13

(8)企業再生税制の見直し

2025年6月6日、円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続き等に関する法律(以下、「早期事業再生法」と呼ぶ。)が成立し、 全対象債権者の同意ではなく、多数決(議決権の総額の4分の3以上の同意等)及び裁判所の認可による私的整理が導入されることになりました。
これに対応して、関連する以下の企業再生税制が見直されます。

  • ① 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金制度について、貸倒引当金の繰入事由に金銭債権に係る債務者について生じた、早期事業再生法の規定により、 対象債権者になされた権利変更議案の決議(以下、「権利変更決議」と呼ぶ。)に基づいてその弁済を猶予され、又は賦払により弁済されること追加。
    その場合の繰入限度額をその金銭債権の額のうち5年以内に弁済されることとなっている金額以外の金額とされます。
  • ② 欠損金の繰越控除制度について、控除限度額がその繰越控除前の所得の金額となる事実に、早期事業再生法の規定により、権利変更決議の効力を生じたことが追加されます。
  • ③ 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額、地方法人税額及び防衛特別法人税額の還付の特例について、還付請求の対象となる事実に、早期事業再生法の規定により権利変更決議の効力を生じたことが追加されます。

(9)その他の主な見直しについて

① 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の見直し

  1. 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例につき、適用除外法人の常時使用する従業員数は500人超から400人超に引き下げた上で、 対象となる減価償却資産の取得価額を30万円未満から40万円未満に引上げ、適用期限が令和11年3月31日まで3年延長となります。
  2. 同特例の改正に伴い、中小企業投資促進税制の工具、中小企業経営強化税制の工具器具備品及び中小企業防災・減災投資促進税制の器具備品の取得価額要件が現行の30万円から40万円以上に見直しが行われます。

② 老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律(いわゆる、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」の改正)による特例措置の拡充や見直し

  1. 老朽化マンションの急激な増加や、大規模災害の発生懸念が年々高まっており、国民生命保護の観点から、老朽化マンションの再生が喫緊の課題となっている中、 建替えなどの再生等に係る取り組みの強化やマンションの再建等の復興を促進する仕組みとして、マンションの建替え等の円滑化に関する法律が令和7年5月23日に改正され、令和8年4月1日から施行されます。
  2. 同法の改正に際して、新たな事業手続を活用した再生等を円滑に進めるため、法人の一般の土地譲渡益に対する追加課税制度の適用除外措置が見直された上で拡充され、 また、同法改正後のマンション再生事業における一定の権利変換及び敷地分割事業における一定の敷地権利変換について、換地処分等に伴う資産を取得した場合の課税の特例のうち、 完全支配関係がある法人間で譲渡された譲渡損益調整資産の譲渡利益額を引き続き計上しない措置等が講じられます。

③ グループ通算制度における投資簿価修正制度における調整勘定対応金額の加算措置について

  1. 調整勘定対応金額の加算措置について、通算完全支配関係発生日以前に離脱法人の株式の譲渡をした場合の調整勘定対応金額の調整の対象となる譲渡から、全部取得条項付種類株式に係る取得決議による完全子法人化の際の離脱法人の株式の譲渡が除外されます。
    ただし、当該株式の取得決議により交付を受けた離脱法人の株式の価額がその譲渡をした株式の価額とおおむね同額となっていないと認められる場合は除かれます。

2.消費課税

(1)インボイス制度(適格請求書等保存方式)の定着に向けた対応

2023年(令和5年)10月1日から開始されたインボイス制度の社会的な定着をより確実なものとするため、インボイス制度導入に係る事業者の事務負担に配慮した措置として、 適格請求書発行事業者となる小規模事業者についての経過措置、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについての経過措置が講じられました。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図14 2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図14-1

(2)国境を越えた電子商取引に係る消費税の適正化

物品販売に係る国境を越えた電子商取引の市場が拡大する中、少額輸入貨物に対する免税制度による競争上の不均衡や国外事業者による無申告が顕在化していることから、 諸外国と同様、少額輸入貨物に対する免税制度の対象となる取引について、その販売者に消費税の納税義務を課す制度を導入するとともに、プラットフォーム事業者に物品販売に係る納税義務を転換する制度が導入されます。
当該概要については、以下の通りとなります。

2026年度(令和8年度)税制改正大綱の概要 図15

(3)暗号資産に係る課税関係の見直し

金融商品取引法等の改正を前提に、以下の見直しが行われ、金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後に行われる暗号資産の譲渡等に適用される予定となります。

  1. 暗号資産の譲渡を有価証券に類するもの(現行:支払手段に類するもの)の譲渡として、引き続き消費税を非課税とされます。
  2. 消費税の課税売上割合の計算上、暗号資産の譲渡については、その譲渡に係る対価の額の5%相当額を資産の譲渡等の対価の額に算入します。
  3. 暗号資産の貸付けについて消費税を非課税とするほか、所要の措置が講じられます。

結びと次回予定

本コラムの執筆時が、2026年2月8日投開票の衆議院選挙前でありますが、衆議院選挙終了後の与党政権により、令和8年度税制改正の関連法案が閣議決定されたのち、 通常国会での審議となりますので、今年度末(2026年3月31日)までの成立に間に合わない等の懸念があり、税制改正大綱から改正法案の内容は異なる可能性があります。

従いまして、令和8年度税制改正の動向については、大綱では示されなかった詳細等も含め、次回以降のコラムにて順次、ご紹介が出来ればと思います。

本コラムの内容は、限定的な内容の記載にとどまります。
したがって、本コラムで説明した税制等の適用を前提とした取引等を実施される場合は、個別の事実関係を踏まえて、専門家の助言を得る事が必要です。
なお、会員又は本記事を入手された方が、本記事の内容に依拠した事によって生じた損害等について、執筆者は一切の責任を負いませんので予めご留意ください。

筆者プロフィール

福武昌信

大手監査法人で監査・上場準備・アドバイザリーサービスに従事後、福武公認会計士・税理士事務所を開業し、独立。
独立後は、課題解決型事務所として、会計・税務・関連アドバイザリー業務に従事し、現在に至る。公認会計士・税理士。