第4回 理念の効果と活用
最終更新日:2026年3月9日
カテゴリ:戦略策定(マネジメントシェア)
皆さん、こんにちは。「理念策定」コラムの第4回をお届けします。
前回のコラムでは、理念策定のステップやヒントについてご紹介しました。
今回は、理念を策定する意義や、その後の活用についてお伝えします。
最後までお読みいただけますと幸いです。
1.理念の意義
それではまず、理念の意義について考えてみたいと思います。
工場で味噌のパッキングをしているパートタイマーの例です。
(図1)
理念とは、「何のためにこの会社で働いているのか」ということを表すものです。
図1の二人のパートさんでは、かなり違いがありますね。
やっていることは同じです。
実際に行っているのは味噌のパッキングです。
この単調と思われる作業を、日々ずっと続けています。
もし、ここに何の意味も見出さないとすれば、これは単なる苦行ではないでしょうか。
あるいは、自分の時間を切り売りしているようなものかもしれません。
しかし、そこに理念が入ってくると、その仕事に意味が生まれます。
そこに誇りを持つようになります。
(図2)
こちらは、よく見られる例かもしれません。
ここでも、同じ仕事をしているにもかかわらず、それぞれの目的が異なっています。
視点も、次第に広がっていますね。
ここで、意義について少し考察してみたいと思います。
味噌のパッキングの例や、レンガ職人の例を見ると、同じことをしていても、 「何故その仕事をしているのか」「何のために毎日大変なことをしているのか」 というものが有るのと無いのとでは、全く異なります。
お金のため、生活の糧を稼ぐためということは、もちろん大事ですし、最も大事と言ってもよいかもしれません。
ただ、それだけではどこか寂しさを感じたり、だんだんしんどくなってくることもあると思います。
会社で働く社員にとっても、もしも金銭面だけでしたら、同じような仕事で条件の良いところがあれば、すぐに移るということにもなりかねません。
しかし、理念が心の中に定まると、仕事にやりがいを持つようになってきます。
そこに意義を見出すことができるようになります。
そうすると、「こんなことをすればお客さんがもっと喜ぶのではないか」といった、自発的なアイデアや新しい発想も出てくるようになり、現場も活性化していきます。
なお、前回のコラムでもご紹介しましたが、理念は決して全社(会社)レベルだけのものではありません。皆さんの所属する各組織(部署)や個人レベルでも存在し得ます。
読者の皆さんがリーダー・マネージャーの方でしたら、ぜひ皆さんが主導して、組織の理念を策定・共有していただきたいと思います。
また、一般職の方でしたら、ご自身一人ひとりの仕事について、改めて考えてみていただきたいと思います。
そのことが、仕事の意義を見つめ直すことに繋がり、モチベーションやエンゲージメントの向上にも役立ちます。
2.理念の効果
理念の策定・共有により見込まれる効果を、以下に記載します。
① モチベーション(士気)の向上
- 何のために働いているのかという問い、悩みに応える。
- 歯車感、虚無感から脱却し、仕事の意義を見出し積極的に働くことができる。
- 個人や組織全体の士気を高め、存在の拠り所となる。
これは、既に会社で働いている社員にとっても言えることですが、新入社員を新たに迎え入れる時にも重要です。
会社が大切にしている価値観や目的をしっかりと説明して、共感を得たうえで入社してもらえれば、根本的な部分でのストレスは生じにくいものと考えられます。
② 組織力の強化(企業体質の強化)
- 組織の一体感が高まる。
- 一人ひとりの努力(個の力)の方向が揃い、チームワーク(組織の力)が発揮される。
皆が同じ目的を持って同じ方向に進む(行動を重ねる)ことにより、組織としての一体感が高まります。
個人の力の方向が揃い組織力が発揮される、いわゆる「個も組織も強い状態」を目指します。
③ ステークホルダーとの繋がりの深化
- 顧客や取引先などは、目標を力強く掲げている企業を信用しやすく、その企業と関わろうという動機が働きやすい。
-
社員、メンバーは、「何故この仕事をしているのか」「どのような価値を生み出せるのか」を理解することによって、組織や社会との繋がりを深める。
そして、そのことが「どう貢献するのか」を考え行動するための基礎となる。
顧客や取引先の他、特にZ世代やミレニアル世代といった若い世代の人たちは、これまでにないほど企業の目的・理念を重視していると言われています。
これらを明確に定めて共有することによって、若手社員や社員候補の人たちとの繋がりを深めることができると期待されます。
④ 事業領域(ドメイン)の再定義の拠り所
- 成長性や収益性の低下、内外環境の変化などにより、現在のドメインが通用しなくなった場合には、ドメイン(対象顧客、提供価値、独自能力)の再定義が必要となる。
理念はその際の拠り所(指針)となる。
(ドメインの詳細については、掲載済みの「戦略策定コラム-第6回」をご参照ください。)
3.理念の活用
理念を定めた後は、あらゆる判断・行動の拠り所として活用します。
これが重要であり、活用されなければ理念を策定する意味はありません。
理念が組織に浸透し、実際に活用されているかを確認するための、チェックリストをご紹介します。
(図3)
以前、私が伺った会社では、役員会議室の壁に理念が額に入れて掛けられていました。
社長は、「役員会で議論が揺れたときに、その理念を見る。
この議案は当社の理念に合っているのか。
理念に照らし合わせて、やるべきかどうかを考える」と仰っていました。
理念は、額に入れて飾っているだけでは意味がありません。
活用されて初めて価値を生みます。
チェックリストも参考にしていただきながら、ぜひ理念の活用を図っていただきたいと願っています。
御礼
今回を持ちまして、理念策定コラムの連載は終了となります。
当コラムをお読みいただき、誠にありがとうございました。
筆者プロフィール
帖地博幸
コンサルティング企業、IT企業、監査法人、学校法人にて、企業経営やITに関するコンサルティング及び研修業務に従事。
(経営基礎知識、論理的思考力、戦略策定、IT、管理会計などを主に担当。)
現在は主に、企業の理念と戦略の「共有」をテーマにコンサルティングや研修を行う。
マネジメントシェア株式会社代表取締役、中小企業診断士、理念と戦略の共有コンサルタント、後継者の軍師®
参考文献
- 後継者塾テキスト「真の企業理念」
- 軍師アカデミーテキスト「リーダーシップ」
- 戦略シナリオ[思考と技術]
-
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2020年3月
論文:「PUT PURPOSE AT THE CORE OF YOUR STRATEGY」 -
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2020年10月
論文:「BUILDING ONE AND ONLY BRAND THROUGH MISSION-DRIVEN MANAGEMENT」
{後継者の軍師(一般社団法人軍師アカデミー)}
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{株式会社東洋経済新報社}
{株式会社ダイヤモンド社}
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