ICSP 会計税務研究会

第2回 理念の検証・再構築

最終更新日:2026年1月21日

カテゴリ:戦略策定(マネジメントシェア)

皆さん、こんにちは。「理念策定」コラムの第2回をお届けします。

前回のコラムでは、理念の言葉の定義や例などについてご紹介しました。

今回は、引き続き2つ目の事例紹介と、理念の検証や再構築の必要性についてお伝えします。
最後までお読みいただけますと幸いです。

1.理念の例

(図1)

第2回 理念の検証・再構築 図1

今回は、皆さんもよくご存じの「スターバックス」の例を取り上げます。
スターバックスでは、「人々の心を豊かにし活力を与える」ことを理念とし、これに続く3つの言葉を掲げています(これらも理念の一部を構成しています)。

  • ひとりのお客様
  • 一人ひとりに応える接客や寄り添ったサービスを提供する。
    そして、「こんにちは」という元気な声かけ、笑顔で迎えること。

    顧客を迎える時の挨拶は、「いらっしゃいませ」ではないんですね。
    構えた感じではなく、くつろいでもらいたいという思いがあるのでしょうし、これも活力を与える取り組みの一つとなっています。

    また、「紙カップや袋にメッセージ」とありますが、実際に筆者も何度か書いてもらったことがあります。
    筆者の妻(および筆者)は、ホルンという(でんでん虫のような形の)楽器を趣味で吹いているのですが、 ある日、妻がホルンを背負ってお店に入ったところ、このホルンの絵を描いたカップを、音符の絵も添えて出していただきました。
    「凄いなー、よく見ているなー」というのが率直な感想ではありましたが、「一人ひとりの顧客に楽しんでもらいたい」という従業員(パートナー)の方々の思いを感じました。

  • 一杯のコーヒー
  • コーヒーの味に徹底的にこだわる。
    社内テストなども行って、バリスタを育成している。
    ドリンクはできる限り一人ひとりに合わせて、カスタマイズしたものを提供する。

  • ひとつのコミュニティから
  • 地域社会とのつながりを重視する。
    地域の人々に受け入れられ、愛着を感じてほしいとの思いがある。
    そのために、地域ごとに異なる店舗デザインを採用し、地元産木材を使用したテーブルなども設置している。

このような形で、地域社会に根差す取り組みを行っています。

なお、弊社の事務所は神戸市の海の近くにありますが、近所にあるスターバックスのお店は、船を模したデザインになっています。

スターバックスでは、これらを「人々の心を豊かで活力あるものにする」ための取り組みと考えて、実行しているわけですね。
前回のマースペットケアの例と同様、理念を具体的な行動に活かしています。

2.理念の検証・再構築

ここまで、理念が実際の取り組みに活かされている例をご紹介してきました。

しかし、過去に策定した理念が現場の社員の行動や判断に反映されず、形骸化してしまっている場合は、再構築が必要となります。

(図2)

第2回 理念の検証・再構築 図2

組織が進化のプロセスを経て成長の限界に直面した場合や、事業承継により社内環境が大きく変わる場合などでは、 変革のステージを超えて新たな価値を創造するために、あらゆる組織活動の拠り所となる理念の検証・刷新が求められます。

ではここからは、理念の再構築について見ていきます。

(図3)

第2回 理念の検証・再構築 図2

現時点で理念が存在していたとしても、時の経過、世の中(ニーズ)の変化、社内(人)の変化により、それがそのまま使えるかどうかは分かりません。
これまでの理念は価値あるものとして受け止めた上で、現在の浸透・共有状況を検証し、もう一度理念の構築に取り組むということをぜひ行っていただきたいと思います。

今まで、そしてこれからも変わらない価値観は何か。
顧客や市場、社会のニーズを満たし、今後も必要とされ生きていく。
このために、どのような存在となるのか。

これらを徹底的に考え、明文化し、組織の最上位概念とします。

この理念を最上位としたマネジメントのイメージが、図3左下のイラストです。

経営者と従業員の全員が、理念(旗)の方向を目指して頑張っていこうとする。

経営者も、「自分はトップという役割だが、皆が同じ船に乗っている。皆でゴールを目指そう」と。

このような状態になれば、皆が「同じ志を持った人」という関係になり、マネジメントも行いやすくなります。

逆に、理念が存在せず、経営者個人の求心力だけで組織を掌握しようとすると、図3右下のような「経営者 対 従業員」という敵対的な形になりかねません。
敵対的というのは、例えば給与や休日の扱いなどで、経営者と従業員の間で損得が対立する-給与を低く抑えれば経営者は得、従業員は損-といった構図です。

「あなたは経営者、我々は従業員」(あるいはオーナー経営者であれば、「あなたは資本家、我々は労働者」・・・)。
「社長と私たちは立場が違う」というように対立の関係に陥ってしまいがちです。

このようなことを避けるには、どうすれば良いでしょうか。

やはり皆が共有できるような理念を明確に打ち立て、共に実現を目指す関係を築いていくことが、望ましい組織の姿ではないでしょうか。

次回の紹介

次回は、理念の策定ステップやヒント(留意点)などについてお伝えしたいと思います。
次回もぜひご覧ください。

筆者プロフィール

帖地博幸

コンサルティング企業、IT企業、監査法人、学校法人にて、企業経営やITに関するコンサルティング及び研修業務に従事。
(経営基礎知識、論理的思考力、戦略策定、IT、管理会計などを主に担当。)
現在は主に、企業の理念と戦略の「共有」をテーマにコンサルティングや研修を行う。
マネジメントシェア株式会社代表取締役、中小企業診断士、理念と戦略の共有コンサルタント、後継者の軍師®

参考文献

  • 後継者塾テキスト「真の企業理念」
  • {後継者の軍師(一般社団法人軍師アカデミー)}

  • 軍師アカデミーテキスト「リーダーシップ」
  • {後継者の軍師(一般社団法人軍師アカデミー)}

  • 戦略シナリオ[思考と技術]
  • {株式会社東洋経済新報社}

  • DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2020年3月
    論文:「PUT PURPOSE AT THE CORE OF YOUR STRATEGY」
  • {株式会社ダイヤモンド社}

  • DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2020年10月
    論文:「BUILDING ONE AND ONLY BRAND THROUGH MISSION-DRIVEN MANAGEMENT」
  • {株式会社ダイヤモンド社}