ICSP 会計税務研究会

第7回 「具体策(解決策)の策定」

最終更新日:2025年10月2日

カテゴリ:戦略策定(マネジメントシェア)

皆さん、こんにちは。「戦略策定」コラムの第7回をお届けします。

前回のコラムでは、戦略の基本となるドメイン(事業領域・生存領域)についてご紹介しました。
今回は、ドメイン設定後の具体策の策定についてお伝えします。

最後までお読みいただけますと幸いです。

1.ドメインに沿った具体策の策定

ドメインは、「誰に(対象顧客)」、「何を(提供価値)」、「どのように(独自能力)」提供するのかという、事業の方向性を定めるものでした。
このドメインを設定した後は、ドメインに沿った具体的な解決策を定めることになります。
「では何をするのか?」ということですが、ドメインが明確になれば、自ずと(ある程度)やるべきことが見えてきます。
「これをしなければこの戦いには勝てない、だからこれをするんだ」ということを、ドメインでの選択・集中・差別化を意識して決めていきます。

例えば、前回までの商店街の魚屋の例でしたら、どのようなことが考えられるでしょうか。

(図1)

第7回 「具体策(解決策)の策定」(マネジメントシェア)図1

(図2)

第7回 「具体策(解決策)の策定」(マネジメントシェア)図2

対象顧客としては、「健康志向の高い地元の消費者(地元ファン)」を選択しました。
彼らの「新鮮で美味しく安全な魚を食べたい」というニーズを選択しています。

提供価値は、「新鮮で美味しく安全な魚とその加工品(高付加価値商品)」です。
ここに集中します。狭いからと言って店舗を拡げたり、駐車場を作ったりすることに、(現時点では)お金をかけることはしません。

独自能力は、「魚の鑑識眼や加工技術、産地直送の仕入ルート、高い接客力」です。
これらを活かして、新鮮・安全で質の良い商品を提供し、競合との差別化を図ります。
大手スーパーと張り合って、価格を下げるようなこと(価格競争)は行いません。

では、もう少し具体的に考えてみましょう。

例えば、課題(戦略テーマ)として、店舗全体の接客力の向上が挙げられます。
接客については、経営者の妻は優れているものの、アルバイト店員の質は低いという状況でした。
提供価値として高付加価値商品を扱う以上、商品の魅力を伝えるための接客力が重要になります。
対象顧客のファンを離さないためにも、店舗全体の能力向上が求められます。
そこで、接客力の高い経営者の妻が教育を担当し、店員の接客スキル向上を図るといった施策が考えられます。

また、地域住民への訴求(お店の強みや理念のアピール)も、重要な課題です。
具体策としては、対象顧客とした「健康志向の高い地元住民」をつかむために、近隣の高級住宅街へチラシを配布することや、 近くに出店するスーパーから見える位置に看板を設置し、来店顧客を誘導する、といった施策が考えられます。
(尚、SNSでの発信・訴求もファンづくりのためにはもちろん良いのですが、広範囲への広告は、ターゲットが異なるため基本的には不要と考えます。)

実際に行う際には、ドメインの設定においても、その後の取り組みの決定においても、市場調査や仮説の検証が必要となります。

例えば、3C分析では周辺の人口が増加しているとありましたが、どのような人々が増えているのか、 掘り下げて確認します(高級住宅街の住民か、新築マンションの住民か、年齢層や家族構成はどうかなど)。

また、彼らが魚に対してどのようなニーズを持っているのかを把握します(実際にお客さんに聞いてみるのが効果的です)。

さらに、競合調査(出店予定の競合店はどのような魚を扱おうとしているのか、競合チェーンの他の店舗に行って調べてみるなど)も行います。

そしてこれらを鑑みて、その地域の特性(嗜好)に応じた、品揃えや打ち手を決めていきます。

2.問題解決(具体策策定)のための思考法

ここからは、具体策を考える際に役立つ、2つの思考法をご紹介します。

1つ目は、思考の枠を広げるための、「ゼロベース思考」です。

(図3)

第7回 「具体策(解決策)の策定」(マネジメントシェア)図3

ゼロベース思考とは、ゼロベース、すなわち「既成の枠」を取り外して、物事を考えることです。
この「『既成の枠』を取り外す」というのは、実際にはなかなか難しいです。
枠を広げて考えると、解決策が見つかる可能性も広がるのですが、自分の思考の狭い枠の中にとらわれて、「解決策が見つからない」と否定的に考えてしまうことも少なくありません。

では、この「既成の枠」の正体は、いったい何でしょうか。

それは、過去の経験や知識、過ごした環境で刷り込まれた常識などです。
自分自身の中に最も多く存在しています。これらは非常に強力でして、自分で意図的に外そうと思わないと簡単には外れません。

この枠が強くなり、今までの自分の経験や習慣の中でしか物事を考えなくなってしまうのが、「経験値依存思考」です。
特に年齢を重ねると、この傾向が強くなるかもしれません。図にもありますが、自称「実践派」の方は要注意です。
「やったことがあるのか?」「やってから言って」と放った瞬間に、枠が狭まり、解が出せなくなってしまうこともあります。
答えは、その枠の外にしかないかもしれません。

思考の枠を広げて、ゼロベースで見つめ直し、解決の可能性を探りたいものです。

(図4)

第7回 「具体策(解決策)の策定」(マネジメントシェア)図4

2つ目は、「仮説思考」です。
限られた時間、限られた情報しかなくても、必ずその時点での結論を持ち、実行に移すというものです。
戦略に関する具体策を策定する際にも、この思考がとても大事になってきます。

ここで上段と下段に分けて示している、ドメイこれとは反対に、良くないのが「状況説明思考」です。
会社や顧客、問題の状況などを延々と説明するだけで、自分の考えや結論を出せない(出さない)思考です。

何かしら結論を出そうとするときには、情報収集や分析に時間をかけることがあると思います。
しかし、これにはまり込んで時間をかけすぎてしまうと、疲れてしまったり時間がなくなったりして、肝心な「考える」ことに時間を使わなくなってしまうといったことが起こります。
あるいは、情報を集めて分析するだけで、答え(結論)が出たと思い込み、それで満足してしまいます。

また、経営を取り巻く環境は、調査や検討をしている間に刻々と変化しています。
ベストな案を追求するあまり時間をかけすぎると、手を打とうと思ったときには時すでに遅しということにもなりかねません。

自称「慎重派」の方は、注意が必要です。

限られた時間と情報の中で結論(仮説)を出し、迅速に行動に移すことが重要です。
(そして、その結果を早く検証し、次のステップにつなげていきます。)

「何がなんでも結論を出す」という意志を持って、皆さんにも具体策の策定に取り組んでいただければと思います。

次回の紹介

次回は、戦略の判断基準などについてお伝えする予定です。

次回もぜひご覧ください。

筆者プロフィール

帖地博幸

コンサルティング企業、IT企業、監査法人、学校法人にて、企業経営やITに関するコンサルティング及び研修業務に従事。
(経営基礎知識、論理的思考力、戦略策定、IT、管理会計などを主に担当。)
現在は主に、企業の理念と戦略の「共有」をテーマにコンサルティングや研修を行う。
マネジメントシェア株式会社代表取締役、中小企業診断士、理念と戦略の共有コンサルタント、後継者の軍師®

参考文献

  • 後継者塾テキスト「事業価値と将来像」
  • {後継者の軍師(一般社団法人軍師アカデミー)}

  • 軍師アカデミーテキスト「事業戦略眼」
  • {後継者の軍師(一般社団法人軍師アカデミー)}

  • 戦略シナリオ[思考と技術]
  • {齋藤 嘉則著   東洋経済新報社}

  • 問題解決プロフェッショナル「思考と技術」
  • {齋藤嘉則著 株式会社ダイヤモンド社}