第6回 「ドメインとは?」
最終更新日:2025年9月4日
カテゴリ:戦略策定(マネジメントシェア)
皆さん、こんにちは。「戦略策定」コラムの第6回をお届けします。
前回のコラムでは、SWOT分析の活用法と留意点についてご紹介しました。
今回は、戦略策定のステップ(第3回参照)の2つ目として、ドメイン(事業領域・生存領域)の設定についてお伝えします。
最後までお読みいただけますと幸いです。
1.ドメイン(事業領域・生存領域)とは?
(図1)
ドメインとは、自社が生き抜くための土俵(生存領域)であり、競争相手との戦いに勝つための場です。
ここが非常に大事でして、このドメインの設定を行わなければ、3C分析やSWOT分析を実施しても意味がありません。
何のために3C分析やSWOT分析を行うのかというと、どこに「選択・集中・差別化」するのかを決定し、それをもとにドメインを設定するために行います。
そしてこのドメインこそが、戦略の基本となります。
では、どのようにしてドメインを決めるのかというと、次の3つの要素を定めます。
- ①「誰に」(対象顧客)
- ②「何を」(提供価値)
- ③「どのように」(独自能力)
これらの要素を設定し、「誰に、何を、どのように提供することで生きていくのか」を明確にします。
「誰に」の対象顧客は、どのようなことに悩んでいる顧客なのか、どのようなことを望んでいるお客さんなのかを定義します。
その顧客にどのような価値を提供するのか。この提供価値が「何を」です。
「どのように」は間違えやすいのですが、単にやりかた(方法)ではなく、「このような能力で」という意味です。
独自の強みを活かして、顧客に価値を提供するということです。
これら3つを主体的に設定することが必要です。 成り行きに任せるのではなく、また、他の人(ライバル)が決めた土俵で相手に有利な戦いをするのではなく、 「ここなら絶対に勝てる」と思える土俵を自分で決めて勝負することが大事です。
2.ドメインの例
(図2)
ある「試作品メーカー」の例を見てみましょう。
この会社の「誰に」は、「大手家電メーカー数社」だけなんですね。
他は相手にしていない。大手家電メーカー数社なんだと。
(但し、これらのメーカーの状況が将来どうなるかは分かりませんので、毎年見直しが必要になってきます。)
「何を」は、「研究開発段階における超短納期かつ確かな精度での試作品加工を」ということで、この会社は、製品そのものは作らないんですね。試作品のみを作っています。
その代わり、超短納期かつ高い精度で試作品を作ります。依頼があれば、それこそ1日や2日で作ってしまいます。
「どのように」は、「試作品づくり35年の技術力と小ロット対応型の製造力」という独自能力によって提供します。
今の時代は3Dプリンターなどもありますが、高い精度を出そうと思うとやはり技術力が必要になってきますので、その強みを活かして提供しています。
このように、「誰に、何を、どのように提供するのか」を定義します。
尚、ドメインは会社や事業などによって定める内容(書き方)が異なってきますが、イメージできるように少し詳しく書くのが良いと思います。
(図3)
続いて、前回まで見てきた「商店街の魚屋」の例です。
3C分析、SWOT分析を経て、図3のようなドメインを設定してみました。
(*ここで紹介するドメインは正解というわけではなく、あくまで一例です。)
ここで上段と下段に分けて示している、ドメインの物理的定義と機能的定義には、以下のような違いがあります。
- ■ 物理的定義:「商品やサービスそのもの」に着目
- □ {具体的、イメージしやすい、広がりがない(狭い)、柔軟性が低い}
- ■ 機能的定義:商品やサービスが提供する「機能や価値」(顧客ニーズ)に着目
- □ {抽象的、イメージしにくいこともあり、広がりがある(広い)、柔軟性が高い}
この例では「何を(提供価値)」が異なっており、物理的定義では「魚とその加工品」、機能的定義では「魚の食卓(食事体験)」としています。
機能的定義では、例えばデリバリー先で魚を調理して提供することや、
動画配信で魚の見分け方や調理方法を伝えて視聴者の食卓で魚料理を再現してもらうことなども考えられます。
後者の場合においても、魚そのものは売っていませんが、「魚の食卓(食事体験)」という価値を提供していることになります。
物理的定義と機能的定義は、一概にどちらが良いとは言えませんが、
物理的定義は(上述のデメリットから)あまり推奨されず、機能的定義の方が一般的には良いとされています。
但し、機能的定義は範囲が広くなりすぎると活動の焦点が定まらなくなる恐れもありますので、
プラスとマイナス(メリットとデメリット)を考慮し、バランスを図りながらドメインを定めることとなります。
そして、このようにドメインを定めた後に、ドメインに沿った具体策を考えることになります。
やるべきことと優先順位を決めていきます。
3.補足(社内向けの仕事について)
第1回のコラムで、戦略は会社全体だけでなく、事業部、部課、そして社員に至るまで、組織のあらゆる階層に存在し得ると述べました。
会社には社内向けの仕事を担当する部署もあり、そうした部署の方はドメインについて少し考えにくいかもしれません。
そのような場合は、仕事の依頼元(の部署や人)を「対象顧客」と捉えてみてください。
その顧客に対して、自身の強みを構築し、それを活かして価値を提供する。そのように考えていただければと思います。
次回の紹介
次回は、ドメインに則した具体策の策定などについてお伝えする予定です。
次回もぜひご覧ください。
筆者プロフィール
帖地博幸
コンサルティング企業、IT企業、監査法人、学校法人にて、企業経営やITに関するコンサルティング及び研修業務に従事。
(経営基礎知識、論理的思考力、戦略策定、IT、管理会計などを主に担当。)
現在は主に、企業の理念と戦略の「共有」をテーマにコンサルティングや研修を行う。
マネジメントシェア株式会社代表取締役、中小企業診断士、理念と戦略の共有コンサルタント、後継者の軍師®
参考文献
- 後継者塾テキスト「事業価値と将来像」
- 軍師アカデミーテキスト「事業戦略眼」
- 戦略シナリオ[思考と技術]
{後継者の軍師(一般社団法人軍師アカデミー)}
{後継者の軍師(一般社団法人軍師アカデミー)}
{齋藤 嘉則著 東洋経済新報社}