第3回 「戦略策定のステップ」
最終更新日:2025年8月7日
カテゴリ:戦略策定(マネジメントシェア)
皆さん、こんにちは。「戦略策定」コラムの第3回をお届けします。
前回のコラムでは「戦略の型」と題して、戦略を考える上での3つの視点や、事業における宿命・鉄則についてご紹介しました。
今回は、戦略策定の基本的な流れや、前回の補足事項などについてお伝えしたいと思います。
最後までお読みいただけましたら幸いです。
1.戦略策定のステップ
戦略(事業の方向性、道筋)は、どのように描けば良いのでしょうか。
その手順を示したのが、(図1)の「戦略を導き出すステップ」です。
戦略策定の手法には様々なものがありますが、ここでは最も基本的な流れをご紹介します。
(図1)
(図1)を参考にしながら、この3つを見ていきます。
まずは、(1)現状の把握です。
3C(顧客・自社・競合)分析や、SWOT(強み・弱み・機会・脅威)分析などを実施し、事業の置かれた状況を把握します。
次に、(2)ドメイン(事業領域、生存領域)を設定します。
これにより、具体的な事業の方向性を明確にします。
その上で、戦略テーマ(課題)と解決策を策定していくという流れになります。
それでは、順に見ていきましょう。
2.3C(顧客・自社・競合)分析
現状分析の1つ目として、3C分析を取り上げます。3C分析は、戦略策定の基本となるフレームワークです。
前回のコラムでも触れました3C(顧客・自社・競合)の視点から、現状を分析していきます。
(図2)
以下、3つの視点について簡単に振り返ります。
・顧客(Customer)
市場規模、成長性、構造変化などを注視しますが、最も重要なのは顧客のニーズです。
お客様はこれから何を求めていくのか、顧客にとっての価値は何かということを徹底的に考えます。
・自社(Company)
ヒト・モノ・カネなどの経営資源を把握した上で、強みを見出して活かすことがポイントとなります。
・競合(Competitor)
シェアや寡占度、自社と同様に強み・弱みなどを分析し、競合はどのように顧客に応えているのかといった視点で見ていきます。
(図2)にあるもう一つの視点、流通チャネル(Channel)ですが、これは製品を消費者に届けるまでの経路のことです。
メーカー(製造業)の場合は、卸売業者を通しているのか、どのような小売店で販売しているのか、ネットでの直接販売を行っているのか、などが該当します。
販売会社(小売業)であれば、自社が直接消費者へ製品を届けますので(自社が経路そのものであり)、3Cでカバーされることとなります。
このように、3つまたは4つの視点から現状を把握するのが、3C(+1C)分析です。
3.3C分析の例
ここでは3C分析の例として、ある地方都市の商店街の魚屋を取り上げます。
経営者(店主)とその妻、およびアルバイト店員1名で営業しています。
(図3)
まず、顧客について。対象顧客やニーズを考えてみます。
高級住宅地から近い、消費者の健康志向とありますが、
例えば「多少価格が高くても、新鮮でおいしい魚を食べたい、安全な魚を食べたい」といったニーズがあるかもしれません。
対象顧客として、地元の健康志向の高い消費者といった選択が成り立つかもしれません。
自社の経営資源としては、プラス面もマイナス面もいろいろとありますが、活かせそうな強みはないでしょうか。
経営者の魚の鑑識眼、魚の加工技術、産地直送の仕入ルート、妻の接客力などがありますので、これらを何とか活かせないでしょうか。
競合については、宅配スーパーの進出や、目の前に大手スーパーが出店するとあります。
これだけを見ると、非常に厳しい状況にも見えますが、競合との差別化を何か考えられないでしょうか。
このように、3つの視点から分析していきます。
尚、この魚屋については、また次回以降のコラムでも取り上げて、戦略を検討していきたいと思います。
4.補足:3S(選択・集中・差別化)は基本だけれど・・・
前回のコラムで、事業における3つの宿命と鉄則についてお伝えしました。
- 全ての顧客ニーズには応えられない・・・だからこそ「選択」が必要。
- 自社の経営資源には限りがある・・・だからこそ「集中」が重要。
- 他社と同じでは認知してもらえない・・・だからこそ「差別化」が大事。
(反対に良くないのが、「網羅」「分散」「模倣」でした。)
この3S(選択・集中・差別化)ですが、すんなりと実施できるかというと、決してそういうわけではありません。
下手に選択・集中・差別化を行えば、会社の存続すら危うくしてしまいかねません。
特定の顧客ニーズを選択し、そこに資源を集中した結果、集客がうまくいかなかった。
売上がほとんどなくなってしまい、結局立ち行かなくなって清算せざるを得なくなった・・・。
そういった事例は、珍しいことではありません。
選択・集中・差別化は簡単なものではなく、これを間違えれば、それこそそのまま倒れてしまいます。
だからといって、選択・集中・差別化をしなくてもよいかというと、今の時代はそういうわけにもいきません。
特に国内向けのビジネスの場合、人口減少は急速に進展していますし、市場のパイは減る一方です。
さらに、海外からの国内市場への参入や投資も続いています。事業環境は厳しさを増しています。
このような状況下で、選択・集中・差別化を行うことなく現状維持を目指そうとしても、生き残ることは難しいでしょう・・・。
だからこそ、事業における宿命をしっかりと受け止めた上で、顧客ニーズを選択し、資源を集中して強みを築き、競合との差別化を図って、
「ここであれば生きていける」「ここであれば勝てる」という場所を見つけていく必要があります。
選択・集中・差別化を誤ると大変なことになります。
だからと言って行わなければ、それはそれで大きなリスクです。
皆さんが経営者の方でしたら、常日頃からこの点について考えておられるでしょうし、今後経営者になられる方(幹部候補の方など)は、この3S(選択・集中・差別化)について、社内で最も深く考える人になるということかと思います。
尚、最終的にはこの恐れや不安がある中で、現状分析なども行いつつ、勇気をもって意思決定をすることが求められます。
この点については、紙面が許せばコラムの後半の回に、もう少し詳しくお伝えしたいと思います。
次回もぜひご覧ください。
次回の紹介
次回は、現状分析の2つ目として、コンサルティングの現場などでも利用されることの多い、
SWOT(強み・弱み・機会・脅威)分析についてお伝えしたいと思います。
次回もぜひご覧ください。
筆者プロフィール
帖地博幸
コンサルティング企業、IT企業、監査法人、学校法人にて、企業経営やITに関するコンサルティング及び研修業務に従事。
(経営基礎知識、論理的思考力、戦略策定、IT、管理会計などを主に担当。)
現在は主に、企業の理念と戦略の「共有」をテーマにコンサルティングや研修を行う。
マネジメントシェア株式会社代表取締役、中小企業診断士、理念と戦略の共有コンサルタント、後継者の軍師®
参考文献
- 後継者塾テキスト「事業価値と将来像」
- 軍師アカデミーテキスト「事業戦略眼」
- 戦略シナリオ[思考と技術]
{後継者の軍師(一般社団法人軍師アカデミー)}
{後継者の軍師(一般社団法人軍師アカデミー)}
{齋藤 嘉則著 東洋経済新報社}